（ﾚﾋﾞｭｰ：15件）
[ﾌｧﾝﾀｼﾞｰ]
月光幻灯機
(10点)優生思想、人工妊娠、孤児、虐待......テーマの重鈍さをより際立たせる独白的な文体で、物語は終始、不思議な静けさの中で進みます。ピアノの音と水泡音で洗脳されてしまった感覚では、正義も赤ん坊の人権も、まるで何が正しいのか分からなくなってしまう。いつの間にか読者側もファーマに存在していたかのような読後感を与える衝撃的な小説でした。
02-17 23:23
[日記]
平凡備忘録
(10点)ご無沙汰しています。恐らくその男性作者です。この日記はあらゆる物に対する冷静な考察が書き連ねられていて、感化されたり感心させられたり、読み応えがあって楽しいです。さて、自惚れでしょうが、御心配をなさってくださったんでしょうか。だとしたら嬉しい限りです。しかし当事者は案外へっちゃらだったりします。欲していたのは才能でも人気でもなく、少し静かなところでした。今はっきりそうわかりました。
01-16 21:20
[文学]
嫉妬
(10点)作中、主人公が妹に羨望の眼差しを向ける描写はなく、寧ろ蔑んでいました。予め、必要な分の情報を文章に変換し整列させたような作品の雰囲気のなか、終始主人公の独白で物語は進められていきます。掌篇のこの物語を読み終え、ブラウザを閉じたときに題名の『嫉妬』が見え、巧い小説だと感じました。確かに嫉妬は、相手を蔑みたい気持ちに駆られるものでした。
12-28 01:45
[文学]
季の葉名は鈴懸
(10点)展開のテンポが良くて読み易かったです。文章自体も、和風とはいえ堅苦しくなく、横書きがネックである携帯小説の特性を、上手くいなして雰囲気を漂わせていると思います。短篇はもちろん長編より量が少ないですから、的確なタイミングと表現が必要ですが、この作品は上手い具合に魅力となる表現を遣っていて、作者さんの筆力が窺えました。携帯小説ならではの良作で、読んでいて楽しかったです（´-`）.｡oO
10-11 02:49
[その他]
そこの嘘つき、お前のことだ
(10点)小説というよりは、詩の分類でしょうか。どちらにせよその他ジャンルは大局的なものだから構いませんね。こういう攻撃的な文章、自分凄く好きです。説教じみていない、けれども同じ目線でもない、啓蒙を匂わせる文章のことです。立場と建前を考慮したような言葉ばかりが頭上を行き交う日常のなか、こういう文章に出会うとハッと気づかされることがあります。とても良い作品でした。
07-15 22:08
[文学]
海月強化週間。
(10点)『考えないこと』と『考えること』が常に対になっていないと、人は巻きすぎたゼンマイのように故障してしまう、という考えに基づく作品に、『海月強化週間』という可愛らしいタイトル。星新一作品のようなエグい内容をポップに書く、近未来SFの雰囲気を醸していてとても楽しめました。人が海月のように生きることの是非、というのはなかなか眠れない夜の考え事にぴったりな題材で、読了後にも楽しめました。
07-14 00:03
[文学]
ワルツ9番 告別
(10点)音が曇る。確かに、ピアノを弾いているとそう感じることがあります。大屋根を閉じているからとも思えない。打鍵の過程で調子の悪いところがあるとも思えない。弾き手の心一つで、曲とは言わずとも、一小節、一拍の違和が表れますね。すべてはピアノフォルテ。弱くか強くかは、指ではなく心情が決するのかもしれません。良作と評すると少し上から目線ですので、珍しい作品、とでも言えば適切でしょうか。とにかく、良い雰囲気です。
12-18 20:14
[文学]
毒薬入り砂糖菓子
(10点)『美しい文章』だと感じるポイントは、人それぞれだと思うんです。僕は比喩的表現によって『この文章は美しい』と感じたりすることが多いです。７５ページより、『優しさも甘さも喜びも最初の一口でいい。』。この一文が光ります。もしこの作品が書籍化して、帯に一文抜粋するなら迷わずこの一文が帯に書かれると思います。全体を通して、初見時、タイトルから毒薬とはなにか、砂糖菓子とはなにか、と考えてみるのと、読了後にその意味を考えるのでは結論はかなり違ったものになりました。そして『毒入り』ではなく『毒薬入り』の意味も、何度も読み
10-13 21:47
[文学]
狂った愛を君にあげる。
(10点)完結は果たして祝うものなのかと疑問に思いながらも、あのドッと押し寄せる達成感を、今マッシュルームさんが感じているのならば、それはお祝いするべきなのでしょう。更新が早くても質は変わらない、携帯小説を執筆するにあたって、大事なことですよね。そういう点も引っくるめて、良作でした。新しい作品を作るのも良し、暫く休息するのも良しだと思います。今したいことを、したいだけするのが、次回へのヤル気に影響する筈です。精一杯ダラッとしましょう。
07-15 21:46
[ﾐｽﾃﾘｰ]
開け放たれた密室
(10点)『メフィスト』やら『このミステリーが凄い』の小説が好みなので、こういう作品モバスペで読めて嬉しいです。作品名もセンスが光っていて惹かれます。作品欄を拝見すると、コメディカテゴリあったので多才な方なのでしょう。これからのより一層の活躍、陰ながら応援させていただきます。
06-29 21:32
[文学]
我が人生の賛歌
(10点)多分、今文学ジャンル上位にある作品で一二を争う作品だと思います。読みやすいし多様な表現で飽きないし、更にはオチまであって心惹かれる作品です。童話っぽかったり哲学的だったり、テイストが180度変わるのが楽しいです。
05-25 23:18
[文学]
海に還る
(10点)風刺的だけど誰でも共感出来るようなお話で、読んでて頷きたくなりました。携帯一つで自由に情報を知れるようになった今、見えない自由を忘れてしまいそうになります。これまた携帯小説で携帯のお話というのが皮肉きいてて好きです。面白い内容です。少し意識されて改行を減らしたのかな？それもまた良い味出してます。
05-09 01:11
[文学]
僕は太陽を紫に塗る
(10点)最後の会話は主人公とその娘、ということと解釈します。奇抜な色彩の絵を描くのは確かに幼児に多いですね。理由は考えたことなかったなぁ。ある程度の枠組みの範囲であると『個性』に成り、枠から外れれば引き戻される。真理かもしれないですね。最近では肌色のことを薄橙というそうです。肌の色は黒とか白とかあるかららしいです。色そのものも差別対象と見られれような時代になってきました。色ですら、人を均すような無個性を図る手段になるなら、寂しいものですね。素敵な作品です。ゆとり世代にはグサッとくる内容でした。
03-28 10:48
[文学]
脳内ストロベリー化現象
(10点)なんでこんな素晴らしい作品が上位にないのか不思議です。最近では文学ジャンル作品がまったく文学ではないので、悲しかったのですがこの作品を読むと文学にまたハマれそうです。ユーモアある表現から核心を突くような文。叙情的な文も引き込まれる要素の一つです。とにかく素敵な作品です。これからも是非頑張って下さい！
03-10 00:40
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